ネット通販などでサツマイモをチェックしていると、「糖度〇〇度」と書かれていることがあります。
例えば「べにはるか」だと糖度50~60度とかですね。でも、後述しますが、メロンの糖度は16度、ブドウも同じ16~18度ぐらいです。
なんとなく高い方が良いのではないかと思われますが、実際にメロンやブドウの3倍甘く感じますかね?また3倍美味しいわけではないですよね?
そこにはいろいろなカラクリがありまして、今回はそんな糖度の話をしたいと思います。
糖度(Brix値)とは
一般的に農産物や食品の糖度は、検出原理に光の屈折現象を応用している屈折計という機器を使用して測定しています。
この機器で測定する値は「屈折率をショ糖溶液の重量%濃度に換算した値」で、Brix値と言われています。簡単にいうと100gの中にショ糖が何g含まれているかの値です。ただ、屈折率を示すのは糖だけではなく、溶液中に溶けている他の固形分も示します。
重要なのは、決して糖だけを抜き出して計測しているわけではないということです。溶液中に溶けている固形物を測定する濃度計と考えてもらっても良いと思います。
Brix値を測定してみる
みかんやりんごなどの果物の果汁、ジュース、はちみつなどは糖の割合が大きいため、Brix値をそのままショ糖濃度(糖度)としても問題ないと考えられています。
しかし、糖分の他に塩分、酸などの水溶性成分が多く溶け込んでいる溶液では、その値をそのままショ糖濃度とするには正確ではなく、目安にしかなりません。
実際に、ポン酢や食器用合成洗剤を測定してみると、次のような非常に高いBrix値がでます。(洗剤はそもそも食品でもありません)
また、イモ絡みで言いますと、デンプンは常温ではほぼ不溶性のため、水にデンプンをいれてただかき混ぜただけの液体のBrix値は0です。デンプンを水と一緒に加熱すると糊化しますが(デンプン粒が水分を吸収して膨らんでいき、糊のような粘りがある状態になる)、この状態で測定すると、Brix値は大きな値(写真だと15.9%)を示します。
写真はキャッサバデンプン(タピオカ粉)ですが、これ自体は甘味はまったくありません。メロンのBrix値が約16%と言われていますので、糖度だけをみるとメロンとほぼ一緒です。
状態によって変わる糖度
最初に書いた通り、Brix値は「100gの中にショ糖が何g含まれているかの値」です。
8.5%のショ糖溶液を煮詰めて、水分をほとんどなくした状態で測ったところ、計測不可(53%以上)になりました。
つまり水分がなくなると糖度はあがるということなので、焼いもや干しいもといった工程中に水分をとばす処理がはいっていると、それ自体で糖度があがるということです(ただ、実際のところ水分をとばしすぎても美味しくないので、調理バランスは難しいです)。
サツマイモ以外の例でいうと、ブドウも生ブドウの糖度は20度ぐらいですが、 干しブドウは糖度65度以上にもなります。
サツマイモの美味しさとは
さて、ここまで書いてきて何が言いたいかと言いますと、サツマイモ(商品)に限って言いますと、糖度(Brix値)はあくまでも目安であり、糖度をそのまま甘さの指標にすることは消費者の誤解を招くと感じています。
理由としては
- サツマイモには糖以外の水溶性成分が多く含まれている。特に加熱するとデンプンも水溶性として測定対象となる。
- 焼いもや干しいもの糖度が高いのは、その工程で水分を飛ばすところに理由がある。そのため、どれぐらい水分を飛ばすかによっても差がうまれる。
また最近の甘い=美味しいという風潮にも疑問を感じることが多々あります。
サツマイモの美味しさは糖の量だけで決まるわけではありません。糖以外のデンプン・ビタミン・ミネラル・ポリフェノールなど、さらには糖組成(ショ糖や麦芽糖の割合)など、様々な要素が絡んで食味を形成しています。
私が最近思っていることは「美味しいサツマイモ」とはなんだろう?ということです。
もちろん人によって違うものです。単に甘いだけでも良いという方もいらっしゃると思います。
答えはないものだと思いますが、人々の様々な好みに応えられるのも、またサツマイモではないかと考えています。