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さつまいものビタミンCは本当に壊れにくいのか?

代表理事の橋本です。

「ビタミンCは熱に弱いが、サツマイモはでんぷんが熱からビタミンCを守ってくれるから加熱しても壊れにくい」

サツマイモの栄養価について調べると、書籍やネットではこのような内容がよく出てきます。
確かに日本食品標準成分表2020年版を確認すると、加熱してもビタミンCはあまり減っていません。

ただ、この内容については以前から、でんぷんが熱からビタミンCを守ってくれるのであれば、でんぷんが麦芽糖に分解されてしまったら、守るものがなくなってしまう。最近の焼きいもは長時間加熱し、麦芽糖生成量が多い(つまりでんぷんが多く分解されている)ので、さすがにビタミンCは壊れるんじゃないのか?と思ってました。(成分表の測定に用いた焼きいもの加熱時間はわかりませんが、じっくり長時間焼いているとは思えないので、火が通るぐらいではないかと推測します。)

ビタミンCは熱に弱いのか?

ビタミンCが熱に弱いというのは、私も昔からよく耳にする話で、特に疑っていませんでした。試しにネットで検索してみると、多くのサイトでビタミンCの特徴の一つに熱に弱いという点を挙げていて、定説のようです。

ただ、やはり疑問に思う人が多いのか、実際に実験も行われていて、いくつか論文などがあがってきます。
結果がわかりやすいのは次の研究レポートでしょうか。

ビタミンCは加熱すると壊れるか

結論としては、ビタミンCが加熱により減少するには想定以上に時間がかかり、2時間程度の加熱ではほとんど減らないようです。つまりビタミンCは熱に弱くはないというのが事実のようです。

ビタミンCとは

ビタミンの中では一番有名かもしれないビタミンCという成分ですが、還元型(L-アスコルビン酸)と酸化型(デヒドロアスコルビン酸)があります。一般的には還元型をビタミンCとしていますが、どちらもビタミンCとしての効力を持っています。

野菜に含まれるアスコルビン酸酸化酵素は還元型を酸化型にする反応を促進させます。また、体内でも還元型から酸化型になったり、逆に還元型に戻ったりするようです。
ビタミンCが本当に分解された状態というのは、体内の酸化型ビタミンCが加水分解を受け、不可逆的にジケトグロン酸というビタミンCの効力をもたない物質に代謝された場合です。

また、そもそもサツマイモに含まれるビタミンC酸化酵素は60℃付近で失活するようで、酸化自体されることも少ないようです。

(参考)じゃがいもの加熱調理におけるビタミンC含量の変化

ビタミンCが減る原因

では、なぜ加熱調理するとビタミンCが減ると言われるのでしょうか?
これはビタミンCは水溶性なので、野菜を茹で調理すると茹で汁に流出して減少します。実際に日本食品標準成分表2020年版のブロッコリーみると明らかに減っています。

一方、パプリカをみると油でいためる調理では100g当りの量は増えているケースもあります。

つまり加熱が悪いのではなく、調理方法が悪いということです。ビタミンCを多く残したい場合は、水を使わない調理(焼いたり、油でいためる)をするか、茹でる場合は短時間でさっと茹でることが大事です。

結論

「ビタミンCが熱に弱い」「サツマイモのでん粉がビタミンCを守る」という通説は間違いのようです。

ただ、いずれにしても、サツマイモのビタミンCは(かなり長時間)加熱しても残ると言って良いと思います。

サツマイモのビタミンCは100g中23mg(皮なし/焼き)です。これはレモン果汁100g中50mgに比べ半分ほどです。
ビタミンCの摂取推奨量は成人で1日100㎎なので、標準的な大きさの焼きいも(200g)を食べることで、1日の摂取推奨量の半分ほどが摂取できることになります。同じ量をレモン果汁にすると100gです。これを一日に飲むのはとてもじゃないですが厳しいですね。

「ビタミンCの補給にはサツマイモ」これは間違いないと思います。

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