さつまいもの黒い汚れの正体ヤラピンの話

2022.9.26

代表理事の橋本です。
先日、ヤラピンについて取材を受けました。

さつまいもは「黒い汚れ」付きが甘い？　ツイート拡散も…識者は否定「外見で甘みは判断不可能」

取材を受けた経緯ですが、９月上旬に「さつまいもは黒い汚れがついてるものを選んで」「黒い汚れは蜜のようなもの」というあるツイッターユーザーの投稿が話題となりました。「参考にしたい」「その通り」とのコメントが集まる一方で、「ヤラピンの多さは甘みと関係がないのではないか」と指摘する意見も複数みられたため、見解を伺いたいということでした。

上記リンク先の内容と重複するところは多いと思いますが、改めてこちらのコラムでも情報をまとめておきたいと思います。

さつまいもの表面の黒い汚れの正体

さつまいもの表面に黒い蜜のような汚れが付いていることがあります。

さつまいもの黒い汚れ

これはサツマイモに含まれるヤラピンという樹脂成分が、これまたサツマイモに含まれるクロロゲン酸などと結びついて、黒く変色したものになります。
サツマイモを収穫する際に、蔓と切り離した部分や傷がついた部分から白い液体が染み出てきますが、これがヤラピンです。また塊根だけではなく、蔓からも出てきます。クロロゲン酸は皮部分に多く含まれるため、皮に触れないと写真のように乳白色で固まります。

切断部から染み出ているヤラピン

サツマイモの調理する際に、カットすると表面から染み出てくることも多く、変色の原因となります。そのため、カットしたらすぐに水につけるように指示しているレシピが多いです。「水につけて灰汁（あく）を抜く」と書かれていることも多いですが、灰汁は主にヤラピンのことを指すものだと考えて良いと思います。

中心部からもヤラピンが出ているが、表層部に近いところから多く出ることがわかる

ヤラピンと甘みの関係

さて、「黒い蜜のような汚れが付いているサツマイモは甘い」というのは、以前からよく耳にする話題でした。私自身は「そんなことはないのにな」と思いながらも、あえて強く否定することもないかと思っていました。

ただ、元のツイッターユーザーの投稿がかなり広範囲に拡散されてしまったり、ニュースサイトなどでも取り上げられていたので、今回は取材を受けたこともあり、否定する意見を出させてもらいました。

では、なぜこのような話が出てくるのでしょうか？個人的な推測ではありますが、次の二つの理由からじゃないかと考えています。

１．近年甘みが強く人気の高い「べにはるか」はヤラピンの量が多く、黒い汚れがついていることが多い。
２．黒い汚れはべたついていることもあり、黒蜜のように思える。

１つ目についてですが、ヤラピンの量は品種によって量がかなり違います。甘みが弱い品種でもヤラピンの量が多い品種はあります。逆に、ヤラピンの量が少なくても甘みが強い品種はあります。
また、黒い汚れは外見上の品質を損ないますし、手や服、収穫器具につくとなかなかとれないために、できるだけ傷がつかないように取り扱います。（傷からヤラピンが染み出てくるので）
つまり、ヤラピンの量と甘みには関係性がないし、黒い汚れがついているかどうかは、収穫や運搬時に傷がついたかどうかに原因があるのです。

２つ目についてですが、ついているのは糖分だと書かれている方もいらっしゃいますが、糖分は染み出てきません。生いもの状態でサツマイモに含まれる糖類は「ショ糖」ですが、粘つくほどの量は含まれていません。