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いも焼酎の「クセ」とは?

 先日、「だいやめ~DAIYAME~」という浜田酒造(鹿児島県いちき串木野市)のいも焼酎が世界に認められました。世界三大酒類コンテストのひとつ「インターナショナル ワイン&スピリッツ コンペティション(IWSC)」で、焼酎部門の最高賞を獲得したのです。
 日本のいも焼酎が受賞するとは、とても名誉なことですね。受賞したいも焼酎は、「いも焼酎独特のにおいやクセ」がなく、「ライチのような香りと味わい」で若い女性に人気だそう。

 では、俗にいう「いも焼酎独特のにおいやクセ」とは何なのでしょうか?ここでは「クセ」とは、味や香りの総体であるとして、いも焼酎の香味についてまとめてみました。いも焼酎を飲んだことがない方は、ぜひ想像力をフル活用して読んでみてください。

 いも焼酎の香味についての研究が進められたのは、平成に入ってからでした。その頃から、原料に使用されるさつまいもの品種による香味の違いに注目が集まりました。つまり、いも焼酎の香味は、さつまいもの品種によって大きく特徴づけられるのです。

旧醸成試験所の調査では、いも焼酎の香りを特徴づける要素として、柑橘系の香り成分である5種のモノテルペンアルコール(ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、リナロール、a-テルピネオール)を挙げています。このモノテルペンアルコールは、マスカットの果実に配糖体として存在し、マスカットワインにおいてその香りが認められています。それと同じ香りの成分が、いも焼酎にも含まれています。簡単に説明すると、さつまいもに含まれるモノテルペン配糖体(ゲラニオール、ネロール)が麹菌の生産する成分の影響を受けて遊離し、蒸留の過程を経てシトロネロール、リナロール、a-テルピネオールに変換されるのです。

<いも焼酎に使われる主な品種と香味>
・「コガネセンガン」
いも焼酎の原料として最も有名なのが、「コガネセンガン」。今では9割以上のいも焼酎が「コガネセンガン」を使用したものです。でんぷん価が高いため、蒸留量が多く、美味しいお酒ができます。
・「サツママサリ」
「コガネセンガン」は表面に縦溝が多く土が入り腐りやすいため、貯蔵性に優れた焼酎専用品種として開発されたさつまいも。「サツママサリ」の焼酎は、甘くフルーティーですっきりとした香味が特徴です。
・「ジョイホワイト」
同じく「コガネセンガン」の品種改良されたものとして最近普及し始めているさつまいも。「ジョイホワイト」の焼酎は、リナロールが「コガネセンガン」の5倍以上含まれていて、軽快でフルーティーな香味が特徴です。
・「ときまさり」
 平成19年につくられた焼酎専用品種「ときまさり」は、ゲラニオールとリナロールの濃度が高く、甘味とコクがある焼酎ができます。
・「ムラサキマサリ」「アヤムラサキ」
 アントシアニンが多く含まれた紫色のさつまいも。高アントシアニン品種を原料とする焼酎は、ワインやヨーグルトの様な香りが特徴的。
・「ベニハヤト」「ジョイレッド」「タマアカネ」
 カロテンが多く含まれるオレンジ色のさつまいも。加熱したかぼちゃやにんじんのような香りが特徴的。特に「タマアカネ」の焼酎は、南国フルーツの香りを連想させる香りとまろやかでコクのある口当たりが特徴です。

 ここまで上げた品種から、多種多様な香味を持つ焼酎がつくられていることがわかりました。でもこれはほんの一部。国内には、それぞれのさつまいもの特色を活かした、「クセ」を持ついも焼酎がまだまだたくさんあります。そして、いも焼酎の個性は、さつまいもだけではないのです。焼酎をつくるときに欠かせない麹の存在も、味や香りに大きく関係します。いも焼酎に使われる麹は、黒麹、白麹、黄麹の主に3種類です。興味のある方は、麹についても調べてみてください。

 さて、今回最高賞を受賞した「だいやめ~DAIYAME~」の「ライチのような香りと味わい」ってどんな香味なのでしょうか…気になります。原料となるさつまいもについても知りたいところ。今後試飲した感想なども記事にしていきたいと思います。

 この記事を読んで、さつまいもについて興味を持った方、ぜひこれからは、いも焼酎の原料となるさつまいもの品種にこだわって焼酎を選んでみては。

出典:
SankeiBiz、「世界が認めた芋焼酎はライチの香り 鹿児島の『だいやめ文化』を輸出へ」
神渡巧・瀬戸口眞治・高峯和則・緒方新一郎「ストレスを受けた焼酎原料サツマイモのモノテルペンアルコール含量と芋焼酎の香気特性」『日本醸造協会誌』、100巻、7号、日本醸造協会、2005年、520-526頁。
小林晃「いも焼酎用品種の現状と育種方針」『いも類振興情報』、141号、いも類振会、2019年、7-11頁。

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